第二十四篇 聖蒼決議 後編
著者:shauna
そして・・・
開け放たれた暗い証人用のドアからその人影は静かに姿を現した。
その姿に、やっとエンドレをはじめとした魔道学会の面々に僅かな希望が差した。
そう・・・それは・・・
「リア・ド・ボーモン!!!」
シュピアが希望に満ちた表情でその名を呼ぶ。
漆黒の騎士服の上に、サイズ2つ上の白のローブを羽織ったものすごく美しい女性。
「これはこれは・・・龍帝リアがお出ましか・・・。」
笑いを含んだ声でクリスティアンがそれを見つめる。
「龍帝・・・確か、元フロート公国軍のトップエリートで、世界最強の騎士だって聞いたことがあるけど・・・」
シンクラヴィアが小さくそう呟く。
リア・ド・ボーモンは腰に携えたレイピアを抜く。
「魔剣アルウェン・・・現在地上にある魔剣の中で最強と謳われる剣の一つですね・・。」
シルフィリアの言葉にリアが笑った。
「そこまで知っているなら話は早い・・・」
リアは短くそう言い返し、そして・・・
軽く剣を一振りした。
すると・・・
まるで烈風の如き白い閃光が糸のように宙を超高速で舞い、そして・・・
窓ガラスというガラス全てを一太刀の元にバラバラ切断したのだった。
「馬鹿な!!!」
そう声を上げるのはシンクラヴィア。
だが、驚いても仕方のないこと・・・なぜなら・・・
剣は切断した窓ガラスに触れてすらいなかったのだから・・・
「我が剣の名を知っているということは・・・知っているでしょう?因果超越攻撃・・・それがこの剣の攻撃方法。振っただけで過程を無視し、任意の空間内に発生する白き閃光と共に、『斬った結果』だけを残す。すなわち、振っただけで近くの物を無数かつ同時に斬撃することができる・・・・・・」
その説明の途中・・・シンクラヴィアが自身のスペリオルを呼び出す。
「アクシオ・・・フローレンス!!!」
光を纏ってその手に現れたのは一本のオールだった。身長の1.5倍はあろうかという程に長いそれをシンクラヴィアが軽く振りまわすとそこに透明な水が軌跡を描いた。
そして・・・
「水の矢(ウォーター・アロー)!!!」
その言葉と共に発射されたのは数十本の水の矢だった。
水を超密度に圧縮し、絶対の硬度と斬れ味を持った矢はシルフィリアの脇をすり抜け、真っ直ぐにリアの方向に飛んで行く・・・
だが・・・
リアが再び剣を一振りした・・・たったそれだけなのに・・・
全ての矢は叩き落とされたのだ。
「そ・・・そんな・・・」
唖然とするシンクラヴィアをよそにリアは涼しい顔をして説明を再開する。
「また・・・この剣には古い精霊魔法が掛けられていて、装身者を自動で護る。その防御力は、例え数千の矢が私目掛けて飛んでこようともそれをすべて叩き落とし、例えこの法廷が爆破されようとも、私は傷一つ負うことはない・・・すなわち・・・」
「完全に攻防一体の最強兵器ということですね?」
シルフィリアが涼しい顔で問いかけた。
「そういうことだ・・・」
その言葉に驚くシンクラヴィア。
「そんな・・・それじゃ・・・」
そう・・・勝ち目なんてほとんどない。少なくとも、この人から逃げるのは至難の業だ。だが・・・それでもシルフィリアは勝ち誇った顔を崩さない。
そして、リアはというと、当然涼しい顔で言い放つ。
「さて・・・幻影の白孔雀殿・・・どうなさいます?」
引くも地獄、闘うも地獄・・・
シンクラヴィアが息を呑む。
果たしてシルフィリアの結論とは・・・
「確かに・・・恐ろしいことこの上ないですね・・・。しかし、白孔雀と龍帝ですか・・・これは中々の好カードですね。いやはや・・・あれは何年前でしょう・・・あなたが私にボロボロに負けたのは今でも記憶しています・・・それで・・・今からその二の舞を踏もうというのでしょうか?」
完全なる挑発。
ということは闘うということのだろうか・・・
いや・・・だが、あの剣から逃げるのも至難の技・・・
静かに対峙する2人。
その光景に誰もが息を呑む。
「まあ、最も・・・敵ならばですが・・・・」
は?
その言葉にシンクラヴィアと法廷に居た空の雪のメンバー全員が目を丸くする。
その言葉が発せられると共に、リアはフッと笑ってシルフィリアの元に歩み寄り・・・そして・・・
「お久しぶりです。シルフィリア・・・」
「そうですね。1年ぶりぐらいでしょうか?お疲れ様です。リア。」
柔らかな笑顔と共に2人が握手を交わした。
その光景をわけがわからないという顔で見守る面々。ただ、シンクラヴィアを除いた聖蒼貴族の面々だけがクスクスと笑う。
「り・・リア君・・・これは一体どういうことだ!?」
なんとか理性を取り戻したエンドレが静かに驚きを噛み殺しながら聞く。
それに対し、リアは・・・
「言ったはずですよ。私は・・・。もし作戦が失敗するようなことがあれば、その時は『私・・・龍帝リア・ド・ボーモンが・・・我々に反旗を翻す者に、真実の正義の制裁を下しましょう。』と・・・」
と答える。
・・・一体どういうことなのだろうか・・・
後ろで見ていたシュピアのその言葉には疑問を隠せずに居て・・・
ハッと2人・・・いや、法廷全体がほぼ同時に気が付く。
それはリアの服装。
法廷内に現れた聖蒼貴族達全員の服装は、形こそ違えど、全員が黒い服の上に白い服を羽織るというモノだった。
そして、当のリアの服装はというと・・・
漆黒の騎士服に、サイズ2つ上の白のローブ・・・。
「ま・・・まさか・・・」
「私はあの時、我々に反旗を翻す者と言いました。すなわち・・・私達、聖蒼貴族に反旗を翻す魔道学会に対して制裁を下すと・・・。」
「と・・・いうことは・・・」
「いまさら気が付いたのですか?・・・そもそも、おかしいとは思いませんでしたか?いままでどの国も手に入れることが困難だった聖蒼貴族の内部事情をあんなに容易く・・・しかも手に取るようにわかるなんて・・・」
「そんな・・・では・・・我々は・・・シルフィリアの手の上で・・・」
「そう・・・全ての情報はシルフィリア様自身が流していたのですよ。すべて・・・この時を見越した上で・・・」
リアの言葉にシルフィリアに視線が集中する。
「途中でサーラ様たちというイレギュラーが対抗してきたこと、そして聖杯とエクスカリバーは流石に計算外でしたが・・・それ以外はおおむね私の計画した通りです。今までは取るに足らない存在と放置していましたが・・・流石にアリエス様を拉致されたら私としては黙っているわけにも参りません。私を怒らせたのは間違いでしたね・・・。恐縮です・・・随分と思い通りに踊って頂きました・・・。最も・・・あまり美しい舞ではありませんでしたが・・・」
その発言に震えあがる空の雪の面々・・・
そんな・・・まさか・・・
主導権はこちらが握っていると思っていたのに・・・
なのに・・・
「ということは・・・まさか、この裁判まで・・・」
「わかりませんか?ですから、シュピアを殺さなかったんですよ。証言台に立たせる為に・・・とはいえ、今回はリアに大分助けられました。流石、元レオン・ド・クラウンのNo12。素晴らしい働きです。」
「何を言いますか・・・。作戦を考えたのも、私に直接指示を出していたのも、すべてあなたでしょう。敬服いたしました。シルフィリア。あなたには・・・」
その光景を見てただただ驚くシンクラヴィア。すごい・・・自分なんかじゃここまで思いつかなかった。自分だったら、皆殺しにして、「はい、これでおしまい。」だったのに・・・
自らが最も有利に立つ状態にしてからの魔道学会との直接交渉の場をつくるなんて・・・
「見たかい。シンクラヴィア・・・これがシルフィリアだ・・・。」
眼を見張るシンクラヴィアに隣のクリスティアンが静かに言う。
「実を言うと・・・私も2年前、同じことをしようとしたことがある。でも、その時・・・聖蒼貴族に入り立ての・・・若干15歳の女の子に言われたんだ。『己の利益が生まれる場所でそれを享受しないのは罪だ』とね・・・。『殺すということは相手に華々しく散るチャンスを与えることになってしまう。そんなことは許されない。華々しく散っていいのは“真実の悪”だけ・・・。
今回みたいな“行き過ぎた小悪党”は逃げる場すら与えずに一生自分達の足もとに縛り付け、奴隷の如く働かせ、最後はボロ雑巾の如く捨てるのが理想。やりすぎた相手に味わせるのは地獄の淵から掬い取った毒杯・・・。それだけで十分。』と言われたときには流石の私も背筋が冷えたよ。」
すごい・・・自分なんかじゃ、そんな思想にいきつくことは無かった。まさに悪魔か冥王。そんな言葉がしっくりくる気がする。
「さてさて・・・それでは“民主主義”を再開しましょうか?」
シルフィリアのものすごい笑顔に空の雪全員が背筋を凍らせる。
「な・・・何が望みだ・・・。」
エンドレの口から発せられたそれはシルフィリアがまさしく待っていた一言だった。
「なんでもする!!!なんでもやる!!!だから助けてくれ・・・頼む!!!」
その一言にシルフィリアの口元がニヤリと笑う。
「では、まず私の無実。いいえ、それだけではありません。今回の事件にかかわった聖蒼貴族の面々、そして、サーラ・クリスメントとファルカス・ラック・アトール。そして、ロビン・ゴールドウィンの罪の一切を問わず、今後、このことを他言すること無きように・・・」
その一言に、先程までは苦しそうに泣いて・・・そして、今は驚きのあまり口から魂が抜けかけているロビンの顔がハッと明るくなる。
「約束できますか?」
シルフィリアがそう問いかけると、エンドレは「も!!もちろんだ!!!」と必死に言う。この程度の脅迫で堕ちる当たり・・・やはり小物だ。
「次に、リアとそれからロビンの魔道学会内でのランクアップ。それぞれ、一つずつ。そして、現在魔道学会が管理している“刻の扉”の管理人をリアとすること・・・それと、私の元から盗み出した全てのスペリオルの返還。それと、シュピアを含めた今回の事件の実行犯には当然、魔道学会を去って頂きます。それと、魔道学会は今後一切、私達聖蒼貴族を追わず、捜査せず、罪に問わないことを約束してもらいましょう。すなわち、永遠に私達聖蒼貴族はあなた達魔道学会から暗黙の了解のもとに存在する組織とさせていただきます。そして、その上であなた達空の雪はこれからもずっと同じスタイルで存在していただきます。これからも共に歩みましょう・・・あなた達空の雪が存在する限り、私達聖蒼貴族は永遠に存在し続けることとなるのですから・・・。」
「な!!!そんなこと!!!」
「できますよね・・・。Sランク魔道士3人。Aランク魔道士10人以上を保有している空の雪なら・・・」
その一言にエンドレは悔しそうに頭を抱える。
そう・・すなわちそれは・・・シュピアの発言が真逆に実現することを示していた。
つまり・・・聖蒼貴族が空の雪の首輪を持つということ・・・
しかも、この手の思想をする人間は後を絶たない。権力を持った人間となればなおさら・・・
すなわち・・・
空の雪は聖蒼貴族の奴隷として存在し続けることとなるのだ・・・。聖蒼貴族の為の傀儡組織として・・・永遠に・・・
ありえない。普通はこんな条件呑む筈もない。しかし、シルフィリア達、聖蒼貴族の脅迫がそれをさせない。なにしろ彼らは魔道学会の為に殉ずる覚悟なんてないのだから・・・
犬になってまで生きたい。相手のご機嫌をうかがってまで生きたい。悪どい考えの持ち主程、意外とそういう思想を持っていたりするものなのだ。
そう考えれば、魔道学会がどうなろうと知ったことでは無い。条件をのまなければ即刻“死”。飲めば一応は今までの生活に近い状態が返ってくるのだから・・・。
「さて・・・返答は?」
勝ち誇ったようにシルフィリアが問いかけるとエンドレは泣き出しそうな声で議決を取る。
「今の・・・被告人の発言に・・・意義の無い者は・・・起立を持って応えよ・・・。」
その言葉に陪審員席の椅子が引かれ、人が立ち上がる音だけが響いた。
人々のすすり泣く声と共に・・・
結果、全体の約9割が立ちあがり、残りの一割は腰が砕けて立ち上がれないということとなった。
かくして、シルフィリアの言う多数決による議決。通称“民主主義”は実現したのだ。シルフィリアの思想の全ての実現という最高の結果を以ってして・・・。
「一応言っておきますが・・・もし裏切った場合は・・・わかってますね。犯人探しなんてしませんよ。この場に居る空の雪の面々・・・本人だけではありません。家族、恋人、親戚に至るまで、すべてを聖蒼貴族の名の元に抹消します。よろしいですね?」
シルフィリアの問いかけに我が身大事の全員が頷く。
「正直で結構。」
そう呟くとシルフィリアが身を翻し出口へと向かう。流石に疲れた。すこし休みたい。
それに続くように、他の聖蒼貴族達も引き上げ出す。
しかし、まだ納得できない様子の物が一人いた。
シュピアである。
「り!!!リア君!!!!君のように美しい女性が何故!!!!?」
恐怖に顔を崩したシュピアがリアに大声でそう問いかける。
それに対し、リアは涼しい顔で・・・
「美しいから・・・ですか・・・もし、あなたの理論が正しければ、シルフィリアなど大聖人でしょうね。しかし、現実は、御覧の通りの魔王・・・」
「魔王は酷いですね・・・。まあ、否定は致しかねますが・・・。」
「それに、もう一つ、今の言葉は間違ってますよ。」
「確かに・・・」
リアがムッとし、シルフィリアがクスクスと笑う。
「私は男です。」
「「「「「「「「なっ!!!!!?なにーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」
その発言に法廷全体がビリビリ震えるほどの大声が響く。
「本当ですよ。紛れもない男性です。でも、声変わりもしてない上に指先の僅かな仕草まで本物以上に女性ですから、分からなくても仕方ありませんが・・・ちなみに、リア・ド・ボーモンという名前も便宜上必要なので付けたにすぎません。本名はデオン・ド・ボーモンですしね・・・。」
シルフィリアが補足として付け加えるも、もはや、法廷内からは魂の抜けたような顔をした魔道士が大半だった。
それほど驚くことでもないと思うのに・・・。
「な!!!なぜ女の格好なんかを!!!」
誰かがそう叫んだのでリアは仕方なさそうに溜息をつき、答える。
「女性の格好をしていたほうが、相手は油断しますから。実際、今回の事件がそれを証明しているでしょう?外見を偽ることでそれ以上の利益が実際に生まれているのでそうしているだけです。」
「・・・レストランの女性サービスデイに行ってみたり・・・」
「してません。」
「女湯をこっそり覗いてみたり・・・」
「しません!!ってか、裸になったらわかるでしょう!!!?」
ちょっとした冗談のようなやりとりをした後、シルフィリアはスッと肩をすくめる。
「さて・・・では、条件も聞いてもらえたことですし・・・少し休みますか・・・流石に眠たいです。」
その言葉をかわきりに、クリスティアンが高々と宣言した。
「よし、全員引き上げだ。本部に戻れば久々に祝賀会と行こう。」
するとルシファードやモニカがスッと姿を消し、続いてサージルの竜にリーファも飛び乗り、上空へと消える。
残されたのはシルフィリアとアリエスだけとなり・・・
「じゃ、俺達も帰ろっか・・・」
アリエスからのその一言にシルフィリアも頷く。
「ロビンさん・・・一緒に来ませんか?私達もファルカスさん達を交えて軽い祝賀会をするつもりですし・・・よろしければ同席していただきたいのですが・・・」
シルフィリアの誘いにロビンも笑顔で頷き、シルフィリア達の方へゆっくりと歩いて行く。
「ロビン!!!恩を忘れ、貴様まで裏切る気か!!?」
シュピアの大声での追撃に・・・
「ええ・・・裏切ります。」
ロビンはハッキリとそう応える。
「僕は・・・正しい道を進みたいですから・・・例え、それが誰も歩いて無い道でも・・・。」
その言葉にシルフィリアとアリエスも静かに微笑む。
そして、ロビンとアリエスが姿を消し、続いて、シルフィリアも静かに法廷に背を向けた。
この時、法廷内の空の雪の魔道士全員がホッと息を撫で下ろす。
そう・・・
どうやらシルフィリアも流石に最高に頭が回ったわけでは無いらしい。ある重大なことを見逃していたのだ。
ともかく、今はこれでいい。口だけでも言っておけば、相手は退場せざるを得ないのだから・・・。
後は裏切るなりなんなりして、どこかの小国にでも亡命し、身を隠せば、いかに聖蒼貴族と言えど手は出せない。
エンドレもそう考え、口元を小さく緩ませた。
だが・・・
「あ・・・そうそう・・・忘れてました。」
とシルフィリアが振り返ったことで今一度心臓をはねさせる。
「な・・・何かね・・・」
エンドレ、シュピアを筆頭に魔道士全員がポーカーフェイスで静かにシルフィリアの言葉を待った。何しろ、ここでバレたら全ての計画が無駄になってしまう。そうなれば、今度こそ確実に命が危うい・・・。
「いえいえ・・・少し、し忘れたことがあっただけです。」
その言葉に全員が息を呑む。
「し・・・し忘れたこと・・・だと?」
「ええ・・・」
シルフィリアがニッコリと微笑んだ。
「あなた達はそんなことはないと思いますが、昔からこの手口を使って交渉すると、どうにも裏切ってどこかに身を隠したり、亡命して、私達が手を出せない様にしようとする輩が多いんですよ・・・」
もう冷汗が止まらなかった。どうする!!!いっそ、ここで全員でシルフィリアを襲ってみるか!!?いや・・・エクスカリバーにも勝る魔女にかなうはずもない。どうする!!?
「我々は・・・そのようなことは考えなど持ち合わせては!?」
エンドレがそう発言すると共に全ての魔道士が首を縦に振った。
「ええ・・・でも、一応、縛っておこうと思いまして・・・」
「・・・縛る・・・だと?」
「そう・・・何よりも強靭な鎖・・・恐怖で・・・偶然にも我ら聖蒼貴族にはそれ専用の調停者兼拷問吏がいたりするんですよ。」
シルフィリアが絶対に両立することのないはずの職業を2つ並べ立てた途端・・・先程アリエス達が出ていった扉からコツコツと足音が聞こえてきた。
そして・・・
暫くすると、その人物が姿を現す。
と同時に、魔道士全員の顎がカクンと堕ちた。
なぜなら、法廷内に姿を現した人物は・・・
全身を豪華なドレスで身を包んでこそ居るモノの、体も顔も完全にマッチョな男だったのだから・・・
「ジュリエット・・・ここに居る全員に・・・『愛』を教えてあげなさい。」
シルフィリアはそう呟くと同時にその男の元へ缶コーヒーを一本投げるとすぐに法廷の外に向けて歩き出した。
「ウフンッ!!了解(はぁと)!!!」
缶を受け取った男はそれを一気に飲み干し・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
外に出る廊下を歩く途中・・・シルフィリアは地獄の底から聞こえてくるような悲惨で残酷な悲鳴に口元を僅かに緩ませるのだった。
「私を謀ろうなど・・・100年早いんですよ・・・。」
ともかく、これで全てが終わった。
そう思ったシルフィリアの体からは自然と力が抜けていった。
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